ストレッチも筋トレもしているのに肉離れする理由

― 筋肉ではなく「脳からの指令ミス」に注目してください

「毎日ストレッチもしているし、筋トレもしているのに、なぜか肉離れをしてしまった」
「昔よりケアはしているはずなのに、同じ場所を何度も痛める」

肉離れで来院される方から、こうした言葉をよく聞きます。
特に多いのは、真面目で体のことを考えている方です。

一般的には、肉離れは
「筋肉が硬かったから」
「柔軟性が足りなかったから」
「筋力が弱かったから」
と説明されることが多いです。

もちろん、それらがまったく関係ないわけではありません。
ただ、現場で多くの方を見ていると、それだけでは説明できない肉離れが非常に多いのも事実です。

この記事では、
なぜストレッチや筋トレをしている人ほど肉離れを起こすことがあるのかを、
筋肉ではなく「脳からの指令」という視点でお話ししていきます。


肉離れ=筋肉のケガ、という思い込み

肉離れと聞くと、
「筋肉がブチッと切れた」
「筋肉が耐えきれなかった」
というイメージを持つ方が多いと思います。

確かに、結果として筋肉に損傷は起きています。
しかし、筋肉は自分の意思で勝手に動いているわけではありません。

筋肉は必ず、
脳からの指令を受けて動いています。

縮める、伸ばす、力を入れる、力を抜く。
これらはすべて、脳と神経の指示によって行われています。

つまり筋肉は「実行役」であり、
本当の司令塔は脳です。

肉離れは、
筋肉そのものが突然弱くなった結果ではなく、
脳からの指令と体の状態にズレが生じた結果として起こっているケースが多いのです。


「指令ミス」とは何か

ここで言う「指令ミス」とは、
脳が体の状態を正確に把握できていない状態を指します。

脳は普段、
今どれくらい力を出しているか
どれくらい伸びているか
これ以上続けていいか

といった情報を、体から常に受け取っています。

しかし、
疲労が溜まっていたり、緊張が続いていたり、
痛みや不安をかばいながら動いていると、
この情報にズレが生じてきます。

すると脳は、
「まだ大丈夫」
「もう少し出せる」
と判断してしまいます。

その結果、
筋肉側が耐えきれず、
肉離れという形で体がブレーキをかけることがあります。


脳はどうやって筋肉の状態を判断しているのか

脳は、目で筋肉の中を見ているわけではありません。
では、どうやって筋肉の状態を判断しているのでしょうか。

実は筋肉や腱の中には、
体の状態を脳に伝えるセンサーが備わっています。

その代表が、
筋紡錘(きんぼうすい)と
腱紡錘(けんぼうすい)です。


筋紡錘:伸びすぎを教えてくれるセンサー

筋紡錘は、筋肉の中にあります。
役割はとてもシンプルで、

「今、筋肉がどれくらい伸びていますか?」
という情報を脳に伝えることです。

急に筋肉が引き伸ばされると、
筋紡錘がそれを感知して、

「これ以上伸びると危ないですよ」
と脳に知らせます。

すると脳は、
「少し縮めよう」
という指令を出します。

この反応のおかげで、
私たちは無意識のうちに筋肉を守ることができています。


腱紡錘:力の入れすぎを止めるブレーキ

腱紡錘は、筋肉と骨をつないでいる「腱」にあります。

こちらは、

「今、筋肉にどれくらい強い力がかかっていますか?」
を脳に伝える役割をしています。

力を入れすぎると、
腱紡錘がそれを感知して、

「これ以上は危険です」
とブレーキをかけます。

脳はその情報を受けて、
「少し力を抜こう」
と指令を出します。

これも、筋肉や腱を壊さないための大切な仕組みです。


このセンサーがズレたときに起こること

筋紡錘と腱紡錘は、
体を守るための見張り役です。

伸びすぎていないか
力を入れすぎていないか

を常に脳に伝えています。

ところが、
疲労、緊張、睡眠不足、不安などが続くと、
このセンサーの働きが鈍くなることがあります。

すると脳は、
実際の体の状態よりも強い指令を出してしまいます。

その結果、
筋肉が耐えきれず、
肉離れという形で体が止めに入るのです。


なぜ太ももやふくらはぎに多いのか

肉離れは、
太ももの裏やふくらはぎに多く起こります。

これらの部位は、
歩く・走る・踏み込む・止まる
といった動作で、
アクセルとブレーキの両方を同時に求められます。

脳からの指令が少しズレただけでも、
負担が一気に集中しやすい場所です。

そのため、
「いつも同じ場所で肉離れする」
ということが起こりやすくなります。


頑張りすぎる人ほど起こしやすい理由

肉離れを起こす方には、
共通して「頑張り屋さん」が多い印象があります。

練習を休まない
痛みがあっても我慢する
周りに迷惑をかけたくない

こうした気持ちは素晴らしいものですが、
体の感覚よりも頭の判断が優先されやすくなります。

その結果、
脳と体の情報にズレが生じ、
肉離れが起こりやすくなります。


再発を防ぐために本当に大切なこと

肉離れを防ぐために大切なのは、
「もっと鍛えること」ではありません。

今どこに力が入っているか
どの動きで違和感が出るか

こうした感覚を、
脳が正確に受け取れる状態を取り戻すことです。

体が安心すると、
脳の指令は自然と穏やかになり、
無理な動きが減っていきます。


まとめ:肉離れは体からのメッセージ

肉離れは、
筋肉が弱いから起こるケガではありません。

多くの場合、
脳と体の連携が一時的にうまくいかなくなったサインです。

ストレッチや筋トレを否定する必要はありません。
ただ、それだけに頼らず、
体の反応に目を向けてみてください。

肉離れは、
「これ以上無理をしないで」という
体からのメッセージなのかもしれません。

そのメッセージを正しく受け取ることが、
再発しにくい体づくりの第一歩になります。


柔道整復師 後藤康之