症例報告

私が以前担当した患者さんの症例を書きます。専門用語が多いので最後に解説します。

 

【症例者】

年齢:12歳  性別:男性  職業:小学6年生  スポーツ:硬式野球(リトルリーグ、ポジションは主にピッチャー)

 

【現病歴】

右肩関節痛

11月中旬より、投球時に右肩関節後方に痛みが現れた。11月29日に当院来院。本人の希望もあり整形外科を紹介し、12月3日に受診。「右野球肩、Loose shoulder」と診断され、約1ヵ月の投球禁止と肩甲帯の筋力強化の指示を受けた。

 

【初期評価】

視診:右肩下制、円背  安静時痛(-)  圧痛:棘下筋、小円筋   前方引き出しテスト:右(+) 左(±)  MMT:外転、屈曲、内旋、外旋すべて3レベル   ROM:肩外転:右170°左180° 内旋:右45°左70° 外旋:右90°左100°

投球フォーム特徴:ワインドアップ期の体幹後傾、早期コッキング期の肘屈曲不足および肘下がり(

【メカニズム】

左側の不安定性が軽度であることから、後天的に投球が痛みの原因であると推測できる。損傷機序は、肩関節の位置が外転と外旋の組み合わせで、上腕骨頭が間接的な「てこ」の作用が反復活動され、前方に移動し障害が発生したと考えられる。要因としては、投球数過多による腱板機能の低下、それによる肘下がりなどフォームの問題、体幹の片側性の筋緊張の亢進などがある。この選手の場合についても肩甲骨の可動性の低下、右体幹機能の低下が見られた。それにより挙上時に肩甲上腕リズムが乱れ、肩甲上腕関節の剪断力が増加し肩への負担の増加に繋がっていたと考えられる。

【治療プログラム】

①肩腱板筋力と肩甲骨安定化機構の改善 ②体幹及び下半身のバランス強化 を図るため別紙の通りリハビリプログラムを作成した。

 

☆リハビリプログラム

<第1週目(12/6~12/11)>

①物理療法・・・痛みと炎症の軽減

・干渉波(15分間) ・背部マッサージ、穏やかな右肩関節モビリゼーション

②可動域訓練・・・痛みのない可動域の再確立

・振り子運動(5分間) ・棒体操(痛みのない範囲で5分間)

③筋力強化・・・筋萎縮の防止

・等尺性運動(壁を使い、屈曲・外転・伸展・内旋・外旋 各5秒間×10)

 

<第2週目(12/13~12/18)>

①物理療法・・・最小の疼痛と圧痛の状態

・干渉波(15分間) ・背部マッサージ、右肩関節モビリゼーション、肩甲帯ストレッチ

②可動域訓練・・・正常可動域

・棒体操(5分間) ・スイスボールにて肩甲帯ストレッチ(20×3)

③筋力強化・・・MMTで外転、屈曲、内旋、外旋すべて4レベル以上

・チューブ(屈曲・外転・伸展・内旋・外旋 各20×3)

 

<第3週目(12/20~12/25)>

①物理療法②可動域訓練・・・第2週目と同じ

③筋力強化

・チューブ(屈曲・外転・伸展・内旋・外旋 各20×3) ・1kgのダンベルを用い肩甲骨安定化機構のトレーニング ・バランスクッション(片足立ち 両側5秒間×10、スクワット20×3)

 

<第4週目(12/27~12/30)>

①物理療法②可動域訓練・・・第2週目と同じ

③筋力強化

・チューブ(屈曲・外転・伸展・内旋・外旋 各20×3) ・1kgのダンベルを用い肩甲骨安定化機構のトレーニング ・バランスクッション(クッションを二つ並べ片足立ちで移動 20×3、片足スクワット各10×3)

 

【結果】

1月7日に来院し評価をしたところ、不安定性の左右差、肩甲骨の可動性の低下、右体幹機能の低下、は消失した。1月8日、9日に50~70%の投球を行ったが痛みはなかった。

 

※解説

投げすぎにより肩の関節が緩くなる症状でした。痛みにより投球フォームを崩し、関節に負担をかけ悪循環の状態になっていました。しばらく投球は禁止し主に体幹トレーニングを中心にリハビリを行いました。痛みは徐々に緩和され、投球フォームも安定し肩に痛みが出なくなりました。

 

当院へのアクセス情報

住所〒465-0028 愛知県名古屋市名東区猪高台一丁目1407番地 セーヌ藤ヶ丘201
予約予約制とさせていただいております。 当日に空きがある場合もありますので、遠慮なくご相談ください。
※キャンセルは前日までにご連絡ください。
営業時間月・火・木・金 10:00-20:00
土曜日・祝日 9:00-14:00
定休日水曜日・日曜日
電話052-776-1239
駐車場近くに専用駐車場があります
接骨院三幸堂